ゆるやかな踊り

 帰りがけに一杯だけ飲みたいと思い、店に寄ってビールを注文した。ビールは飲んでも飲んでもなくならないように感じられた。これなら、永遠に飲み続けられそうだ。しかし、永遠という概念はあまりにも漠然としており、私にめまいを催させた。めまいの前には、羽音に例えられるような音が聞こえた。でも、永遠に続くものなどないのだと思うと、めまいは次第に遠のいていった。
 すると、急速に視界がひらけ、店内の様子が見渡せた。薄明かりの中、飲みかつ食べながらしゃべり続ける人々は、望遠鏡を逆さに覗いたかのように遠のいていった。そして、テーブルの上のグラスは照明を反射して、その光はゆるやかな踊りを踊った。

『ゆるやかな踊り』2頁